トップページ > 遺産分割の対象となる財産 > 遺産の評価方法について
遺産分割の対象となる財産を特定したら,その財産をいくらと評価すべきかを検討しましょう。
同じ財産でも,いつの時点の評価によるかによって評価額が大きく異なる場合があります。
遺産の評価は,「遺産分割の時点」の評価で決定されます。
相続開始時(被相続人の死亡時)じゃないの?!と思われると思いますが,相続が開始した後,実際に遺産分割が行われるまでに長期間経過する場合もあります。相続開始時には1億の価値があった株式が,遺産分割をする際には0円になっているかもしれません。
このため,実際に遺産が分割される時点の評価額によって決定されることになっています。
不動産の評価は,基準によって大きく金額が異なるため,最も大きく争われます。
地価公示法に基づき,国土交通省の土地鑑定委員会が特定の標準地について毎年1月1日を基準時として公示する価格です。
特定の標準地の評価額しか分かりませんので,遺産である不動産の評価額を出すには調整が必要になります。
土地家屋課税台帳等に登録された基準年度の価格で,3年に1回評価替えが行われています。土地についてはおおむね時価の7割程度とされています。
不動産ごとに評価が決められていますので評価額は算出しやすいですが,時価との乖離も大きいため相続人全員の合意が得られにくい面があります。
財産評価基本通達によって対象土地の地目ごとに路線価方式又は倍率方式によって算定されます。おおむね時価の8割程度とされています。
相続税評価額としても利用されています。
いずれの評価も,それぞれ目的に沿って算出されているものですので,それなりの合理性はあるのですが,必ずしも時価を正確に反映しているわけではありません。
このため,遺産分割協議では,「時価はもっと高いはずだ」「いやもっと安い」などといった不毛な議論に陥りがちですが,調停・審判で不動産の評価を争う場合,数十万円の鑑定費用を要する場合もあり,感情的になって争うのは得策ではありません。
そのような場合には,
・共同で不動産を売り,売却代金を法定相続分で分ける
・共同で不動産鑑定士に依頼し,公平な評価を求める
・自分が取得を希望する場合に相手が高い評価額を主張するなら,逆に相手の主張する金額で相手に取得してもらう,また相手が取得を希望する場合に相手が安い評価額を主張するなら,逆に相手の主張する金額で自分が取得する,などの逆転分割案を検討する
などの対応も検討してみましょう。公平感があり,相手の納得も得やすくなります。
不動産の賃借権,賃借権などの利用権が付いた不動産などは,どのように評価すればよいでしょうか。
財産評価基本通達によって,借地権の評価は更地価格の0.6~0.8とされています。路線価図を確認すると借地権割合が表示されていますので,これを参考にしましょう。
借地権付きの不動産の場合は更地価格から借地権割合を差し引いて計算します。
建物価格から借家権の割合とされる3割を差し引きます。
預貯金は,各金融機関に預金残高証明書の交付を依頼することで遺産分割時残高を確認することができます。
なお,相続開始から遺産分割までの間に一部の相続人が預金を使用してしまっている場合には,遺産分割の対象からは除外されます。
ただし,使用した相続人に返還を請求することはできますので,遺産分割協議の中で同時に解決を図ることが一般的でしょう。
上場株式のように市場の評価が明らかなものはその評価額に従えばよいのですが,宝石,車,非上場株式のように,一概に評価を決定できないものもあります(不動産もそうですが)。
このように評価額が必ずしも明らかでないものは,まずはいくらと評価するかを相続人間でよく話し合い,合意を目指すほかありません。
どうしても合意ができない場合,調停や審判で鑑定が行われる場合がありますが,鑑定費用に数十万を要することを考えると,損得を考えて交渉する必要があります。
※コンテンツ内で事例をご紹介する場合、作成当時の法律に基づきますので最新の判例と異なる可能性があります
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